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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 巾着が地面に叩きつけられ、その拍子に紐が緩み中から銭が零れ落ち、乾いた音を立てる。その音が、清七には自分の心の悲鳴のように聞こえた。
 ほんの一瞬手にしただけでも、その巾着はずっしりと持ち重りがした。相当の銭が入っているであろうことは容易に想像がついた。
 だが。清七の胸の中では烈しい怒りとやるせなさが渦巻いていた。

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