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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

「酷い―」
 お須万は唇を噛みしめると、うつむいた。
 華奢な肩がかすかに揺れている。女が泣くまいと必死に耐えているのが判った。
 お須万にも矜持というものがある。好きでもない男に真正面でここまで悪し様に罵られては、そんな男の前で涙ひと粒だとて見せたくはないだろう。
 また、沈黙。

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