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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 小さく息を吸い込み、清七は続けた。
「お須万さん、これだけは言っておくが、俺はお前の不幸を願ったことなど一度もない。たとえ、あんたが俺という人間を見てくれていなかったとしても、あんたの失(な)くしちまった亭主の代わりにされているのだとしても、俺は十分満足だった。俺にも昔は人並に女房や子どもがいたんだが、三年前に二人共亡くなった。

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