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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 静かな、物哀しい刻がゆっくりと相対する二人を包み込んで流れてゆく。
「私は本当にあなたに対して取り返しのつかない過ちをしてしまったのですね」
 お須万は静かな声音で言うと、片手をついて緩慢な動作で立ち上がる。傍らの大きな荷物を拾い上げようとして思わずよろめくのを、〝危ねえッ〟と清七が傍から支えた。

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