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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

―確か、名はお千寿(ちず)とかいったよな。
 清七はゴロリとすり切れた畳に転がり、染みのある汚れた天井を見るともなしに眺めながら、まだ抱いたことはおろか、顔さえ見たことのない娘を思った。
 父親である自分がこの腕に抱いたことすらないというのに、あの男はお千寿を、父親としてその腕に抱くことが許されるのか!

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