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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 それにしても、実の父親である清七さえその手に抱(いだ)くことが叶わぬというのに、どうして、あの男にはそれがいとも容易く許されるというのだろう。
 一年前に見た嘉一のあのまなざしが再び脳裡をよぎった。清七をまるで蔑むかのような、見下すかのような、はるか高みから見下ろしていた男。あの男だけは許せない、と思った。

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