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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 清七は慣れた手つきで赤児を抱き上げた。赤児をこの腕に抱くのはかれこれ四年ぶりにはなるけれど、昔取った杵柄で、おみのとの間に生まれた太助をよくこうやって抱いて、あやしたものだった。
 赤児特有のやわらかな温もりに触れた途端、清七の胸に熱いものが込み上げた。
 清七はそっと眠っている赤児の頬に触れてみる。紅い熟れた林檎のような頬に、ひとしずくの涙が落ちた。

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