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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第2章 春の夢 弐

 刹那、清七は弾かれたように顔を上げた。
 まなざしとまなざしが交わった瞬間、女の形の良い双眸がこれ以上はないというほどに見開かれる。
 その瞳には明らかにこの再会を歓迎してはいない女の気持ちがありありと表れていた。
 一瞬の後、女がフッと視線を逸らす。
 烈しい当惑を抱えながら、清七はただ茫然として女を見つめているしかなかった。

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