テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第2章 春の夢 弐

 自分の一方的な想いゆえに、女ひとりの生命を奪おうとした―、我が身がしでかそうとしていた行為のおぞましさに改めて気付き、清七は寒気を憶えずにはいられなかった。
 だが、そんな心の葛藤を経てもまだ、清七のお須万への思慕はけして消えることはなかったのである。むしろ、花が季(とき)のうつろいを経てなお、その色を深めるように、川の流れがいっとき、急に深みへと転ずるように、その想いは刻を経て、よりいっそう烈しく深いものへと変わっていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ