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それでも私はここにいる

第109章 桜葬

今年も咲いた
あの人の桜
来たよ…
あなたに逢いに
ここに眠るのは
私のはずだった
なのにあなたが眠る

切ないよ
逢いたいよ
もう一度
名前を呼んで?
そして
優しく笑って?
もう聞けない…
もう逢えない…
もう触れることも叶わない…
こんなに泣いてるのに
あなたを求めているのに
あなたは
この涙も…
この体も…
触れる事は二度と…

当たり前と思ってた日々
あなたが傍ににいることが…
私にいつも笑顔をくれた事が…
もう当たり前じゃ無いんだね

今満開に花開く
この桜を眺めて
在りし日の想い出が
昨日の様に溢れだす
愛してる…
お前だけを…
そう言ってくれた
記念日には
花束を私にくれた…
ねぇ?
覚えてる?
頭を下げて
プロポーズ…
その髪に着いた
花びらを…
あの日の花びら
押し花に…
和紙に包んで
婚約指輪と並んでる
あなたとの愛の想い出が今の私を支えてる

風が野山を渡りやってくる
花びらは舞い上がり
私を包み込む
愛してる…
そう聞こえた
舞い上がった花びらは
天高く上がっていく
私も愛してる…
ずっと…
ずーっと。

いつか私に
その時が来たら
一番先に
迎えに来てね
きっと
きっと
迎えに来てね…
あなたに逢うその日まで
私はまっすぐ生きていく
胸を張って逢える様に
あなたに笑顔を見せるように

空に花びらが舞う
小鳥がさえずり唄う
あなたが眠る桜の下で
美しく咲き誇る桜の下で
私は誓う
強く
強く
生きていく

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