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それでも私はここにいる

第117章 しろいへや

あの人はそこに居る
しろいへや
4つのベッド
そのドア越しに
あの人は横になっている
ドアを眺めては
私が来るのを待っているのか…
私が行くと
見たこともない
嬉しそうな幼い顔で
私を見上げる
わかる?
そうたずねると
目を細めながら
うん。うん。
とうなずく
しばらく話す
会話にはならない
話せないから…
しばらくすると
シワが深く刻まれた
目元から涙が流れる
寂しいの?
しろいへや
知らない場所
話す事が出来ない隣人たち
あの住み慣れた
愛しき我が家
自分が望んだ
思い出の我が家
帰ることはままならない
4人の子供に囲まれた
賑やかな我が家
今はもう会いに来るのは
末の娘だけ…
何のために…
何のために…
しろいへや
そして私は
明日も来ると
約束し手を握る
細い指に
手を絡ませ
じゃあまたね
そう別れる
また明日も
あの部屋であの人は
私が来るのを待っている

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