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この前、近くて遠くて、人を拾いました!?

第1章 支度 (近くて遠い)

酒田は冷や汗を拭いながら腕時計を見た。



もう大分遅刻だっ…



今から車にこの四人で乗るのは地獄なような気がしてならないが、仕方がない…


酒田は、わざとらしく笑いながら三人に出発を促した。



「光瑠さんっ…あのっ…さっきのは…」


「……もういい…何も言うな…」



光瑠は溜め息をつきながら、車に乗り込んだ。



そのあとで、要が真希の手を取ってエスコートする。



「要さん…っ!何であんなことをっ…」



真希は微かに顔を赤らめながら要に小声で聞いた。



「いいじゃないですか…。実際チョコレートをたくさん食べて甘い夜だったのだし、勝手に想像して落ち込んでいるのは社長の方です。」


「っ…そうですけどっ…」


「何をしてるっ!早く乗れっ!」



光瑠に車内から引っ張られ真希は小さな悲鳴を上げた。


要はニヤリと笑って車内に乗り込む。



本当は抱いたどころか、拒まれた身だというのに…


どうせ後で真希さんが誤解を解くだろうから、それまでくらいは、僕の苦しみの一部を体験してほしいものだ──



紳士だが、たまに意地悪。


それが…
関根要の特徴である。



要の思惑通り、光瑠は真希と要に身体の関係があったと思い込んで会場に着くまで何度も溜め息をついていた。

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