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夜のデート

第1章 夜のデート

「ねえ、女子トイレでしてみない?」
トイレの前を通りかかった時に急にヒロが口を開く。
わたしがその提案に驚いている間に、ヒロはトイレの扉を開いて電気をつける。
「へーこうなってるんだー」
蛍光灯の冷たい色に照らされて、いつもつかう場所が広がる。
「なんか、ドキドキしない?」
戸惑うわたしをそのままに、ヒロは意地悪そうに笑みを浮かべながら、個室の一つを指さした。
ヒロの言ったとおり、わたしも少しドキドキしていた。
女の子しか入れない場所に、彼がいる。
「して、みよっか…」
そんなコトバが唇の端からこぼれて、わたしは一歩を踏み出した。
初めて夜の校舎でデートをした時みたいな高揚感が、体全体を包んでいた。

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