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ショートラブストーリー

第6章 祐香(ゆか)

「それって…」

友喜の話に、あたしは記憶の糸を手繰り寄せる。

「発破かけてもらったおかげで合格出来て…入学してからずっと捜してた」

あたしはコーヒー一口飲んで、ふっと笑みをこぼす。

「その子も受かってるか分からないのに?滑り止めかもしれないじゃん」

「ん…でもあれからずっとその顔が頭の中に残ってるし、友達が呼んだ名前も覚えてた」

友喜がこっち見てる。

「祐香ちゃん…俺の事、思い出さない?」

「…確かにそんな事があったような気がする…」

だけど、受験を前にしたあたしにとってそれはあまりにも些細な事で…

相手の顔なんて、頭の片隅にも残ってない!!

「あの日、ようやく会えて、とにかく告白したくて…突然になっちゃったけど」

友喜の手があたしの頬に触れた。

思わずビクリと震えてしまう。

「祐香ちゃんは初めて会ったときからずっと優しいし、可愛いし…ずっと大好きだよ」

友喜がそんな風にあたしを思ってたなんて知らなかった。

「ごめん…友喜、ごめん…なさい」

覚えてなくてごめんなさい

気付いてあげられなくてごめんなさい

意地悪したり冷たくしてごめんなさい

謝らなきゃいけないことがたくさんありすぎて…でも想いが強すぎて言葉にならなくて。

あたしは目を潤ませて友喜に謝った。


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