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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

赤信号で車が停車した。

「北方さん」

課長の呼び掛けに、勇気振り絞って顔を上げる。

目の前に影が落ちた…と思ったら、唇に柔らかいものが触れた。

え…?

キョトンとしたまま、離れていく課長の顔を見上げた。

課長は何もなかったように前を向いて…信号が青に変わり、車は走り出した。

今…キス、した…よね?え!?嘘っ!!

車を運転してる課長の横顔をじっと見つめてしまう。

「北方さん」

「はっ…はいっ!!」

「市民会館、もうすぐだけど」

淡々と話す課長に、さっきのは夢だったんじゃないかと思ってしまう。

だって…まさか、だもん。

「あ、じゃあこの辺で下ろしてもらえれば…」

「家まで送るよ。心配だから」

そう言われてしまうと、断りづらい。

あたしのナビで、アパートまでの道順を辿る。

途中、赤信号に出くわすものの、さっきみたいなことは起こらなくて。

やっぱり夢だったのかな…?

無意識に指で唇を押さえていると

「…嫌だった?」

ポツリと課長が訊く。

え!?…って事は…本当なんだ!!

「嫌じゃないです!!」

勢いよく言って…言った内容を理解した途端、かあっと赤くなった。

うわ…っ!!恥ずかしいんだけどっ!!

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