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お兄ちゃんは…

第10章 *3年前の…*

そこには、美咲らしい字で、俺への言葉が書いてあった。

《翔へ。ほんとにごめんなさい。自分の事は耐えられたけど、翔にまで迷惑をかけたくなかったの。でも、翔と別れたくなかった。我儘かもしれない。でもね、耐えられなかった。だから、この方法を使ったの。どうか自分をせめないで。翔は何も悪くないから。弟さんや妹さんにも仲良くしてもらって、とっても楽しかったし、嬉しかった。でも、そんな翔の生活を私のためにめちゃくちゃにしたくなかったの。弟さんたちには、引っ越したって事にしておいてくれる?最初は転校するっていう手も考えた。でも、家族に迷惑がかかってしまうから。あいつが翔の担任である限り、あいつがあの学校にいる限り、翔への嫌がらせは絶えないと思った。ごめんなさい。自分勝手って事は重々承知してるの。でも、この方法しか私には思いつかなかった。ありがとう、翔。私を彼女にしてくれて、私にたくさんの幸せを与えてくれて。私からは何もできなくてごめんね。でも、翔の幸せを願うわ。メールと同じ内容かもしれない。でも、翔、どうか私の事を忘れないで…私の事を嫌いにならないで…我儘言ってごめんなさい。でも、あなたには覚えていて欲しい。それは翔の幸せを邪魔するかもしれない。でも、幸せになって…ありがとう、翔。また会えるといいね。翔、好きだょ。 美咲》

俺はその場で泣き崩れた。
涙が止まらなかった。
美咲が1人で抱え込んでいた事の重さが身に染みて感じられて。
美咲の辛さが痛いほどつたわってきて…
俺は、美咲を支えられなかった。
美咲が1人で苦しんでいたのに、俺は、何もできなかった…
ごめんねって今でも思う。

今でも好きだよ、美咲。
今まで、美咲を忘れた事はない。
これからも、忘れる気はない。


美咲のためにも、ひなを守らなきゃいけない。
俺は強く誓う。
ひなを守るって。
…美咲のようにはさせないって。

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