テキストサイズ

禁断兄妹

第35章 一人じゃない


「お前が家に戻ってくれたら本当に安心する。金のことは心配ない。ちゃんと保険には入ってたから、俺がいなくなった後もそれなりの金額は下りるようになっている。マンションのローンも完済する」


「生々しいな」


「大事なことだ‥‥病気をするとな、金がかかるんだよ」


その言葉に
ふっと
入退院を繰り返していた母さんのことを思った。


「母さんにも、金がかかった‥‥?」


「まあな‥‥金が必要だったのは事実だな。あの頃はろくに貯金もなかったから借金したりして‥‥お前も保険とか、ちゃんと入っておけよ」


父さんは淡々と言ったけれど
俺は言葉を失った。

───あんたがもっと見舞いに来てたら、母さんは良くなったんじゃないのか───

あの日俺が吐いた言葉に
何も言い返さなかった父さん

朝から晩までがむしゃらに働いていたのは
病気の母さんと俺を養う為だったのに

考えれば分かることなのに気づきもしないで
恥ずかしさに頬が熱くなる。


「‥‥ごめん」


俺は本当に
世間知らずのクソガキだ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ