テキストサイズ

禁断兄妹

第38章 あなたを助けたい


「萌に約束して欲しいことがある」


病院を出て乗り込んだ電車の中
窓の外を眺めていた柊が
私に視線を移して口を開いた。


「もし万が一、誰かに俺達の関係を疑われて問いただされても、誤解だと言って、絶対に取り合わないで」


穏やかな表情
おしゃべりの延長のような何気ない口調
でも柊の瞳には真剣な色が見えた。


「そして、そのことを必ず俺に教えてくれ‥‥どんな些細なことでも。いいね?」


その時私は
柊は暗にお父さんとお母さんのことを言っていると感じた。


「‥‥はい」


「いい返事だ」


柊は私の頭の上に手を置いて
万が一の話だから、と繰り返した後


「それさえ守ってくれれば、萌は何も心配しなくていいから」


そう言って微笑んだ。

病室でしばらくお父さんと二人きりだった柊
私とお母さんが戻った時
部屋の雰囲気は明らかに張り詰めていた。

お父さんに何か言われたの
どんな話をしたの
そう言いかけたけれど
柊の視線は私から離れてまた窓の外へと流れてしまったから
私は開きかけた口をそっと閉じた。

綺麗な横顔

でも柊の横顔は
いつもどこか寂しい。

柊のコートの裾を握ると
それに気づいた柊が小さく笑った。

万が一の話

柊の言葉通り
私もそう思っていた。

この恋は永遠に二人だけの秘密
本当にそう思っていた。

そう思って
いたのに

ストーリーメニュー

TOPTOPへ