Take me
第16章 16
瑛士には家の近辺で待っててもらう。
時間が掛かりそうだからいいよ、と断ったのに瑛士が「いや、それでも待ってる」と言うから。
そして、お兄ちゃんに促されて家の中に。
「どうぞ」
「ありがとう」
扉を開けて入れば、ふっと家の中の空気に包まれる。
自分の家のにおい。
俺の家ってこんなにおいだったんだ…
普段ずっと同じ家で暮らしていると気付けない、このにおい。なのに何故か懐かしい。
この家を出て、何年も経ったって訳じゃないけど
久しぶりだと思えるくらい、瑛士の家での生活はそれなりに充実していたんだと思う。
「あれ、お父さんとお母さんは?」
リビングには誰もいない
「ああ、まだ帰って来てないんだ。
紘夢がまさか今日、話し合いにOKしてくれると思わなかったからね」
俺が急に決めてしまった事だから、対応できなかったみたいだ。
「二人とも買い物に行ってるみたいだから、
きっとすぐ帰ってくるはずだよ」
「そっか」
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