
隠れて甘いkissをして
第35章 離れる心
「……………」
こんな麻里奈を、今まで見た事がない。
常に笑顔で、悪口は絶対言わないいつもの麻里奈とは別人のようだった。
いや……こっちが本当の彼女なのか?
俺が麻里奈に本心を見せなかったように……
電車がホームに入ってきたところで、麻里奈は黙って歩き出した。
「麻里奈!」
俺は慌てて後ろから声をかける。
「……その七瀬隼人の件は、俺と麻里奈の事とは何も関係ないだろ?
バラすって……」
電車のドアが開く。
「……アキくんは、絶対に渡さない。
彼女だけ幸せなんて、許さない」
麻里奈は振り返らずに、それだけ言って電車に乗った。
「……麻里奈……!」
ドアが閉まる。
結局俺は、そのまま電車が発車するのを
ただ見送る事しかできなかった。
