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息もできない

第18章 悪いのは誰なのか

梅雨のじめじめした空気と水分を含んで重そうな雲は人に不安感を与える


居酒屋から圭太と出た時ぽたりと落ちてきた雫に俺は何故か嫌な予感がする、と思った


「うわ、降り出して来たか。直傘持ってる?」
「持ってない」
「仕方ねえな。入れてやるよ」


と圭太は折り畳み傘を鞄から取り出して見せた
折り畳み傘に成人男性二人も入るか?と疑問に思っていたら予想以上に大きく開いた


「ぁ…すごい、おっきい」
「……その言い方エロい」
「ばか」
「はは、行くぞ」


ちょっと軽い下ネタを挟んで来る圭太に軽く返しながら歩いていると道の反対側に春陽の経営してるカフェ「BLEATH」が見えてきた

とっくに閉店時間を回っていて春陽もいつもなら帰ってる時間なのに、何故か灯りがついていた



大きな不安感が体を揺さぶる

脚が、そっちに行くなって言ってるみたいに重い

思考が、きっと副店長さんが作業してるんだって思い込もうとする


「おい、直!」


何故か圭太が俺の肩を掴むけど、目は店内を覗くように釘付けになってる



店の中が覗ける位置、店の正面に立つ
中にいたのは



誰ーー?


知らない、男の人だった
春陽が働いてる時と同じ服を着ているから


ほんとに、副店長さん……だった?


お店の中の人は棚を覗いてはバインダーに挟んだ紙に何か書き込んでる
その光景は会社でも見る発注作業に似ている


俺はほっと胸を撫で下ろした


そんなわけないのに
春陽がお店で女の人といるなんてそんなわけないのに
疑ってた


一瞬、前に俺と2人でお店で飲んだ時のこと思い出して
女の人と一緒に飲んでたらどうしようって考えた



思い過ごしか

最低、俺

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