片想いの行方
第47章 探り合い
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金曜日の夜だけあって、通りは人で溢れている。
ヒメは人混みをスルスルと通り抜け、車道の前で止まると
手を挙げて1台のタクシーを止めた。
「早く乗れよ」
「ど、どこ行くの?」
「いいから」
……待っててくれてたなんて知らなかった。
とはいえ、寒い中一緒に居てくれたんだから
今さら断るなんてことはできないよね……
私はヒメの後に続いて、後部座席に乗った。
行先を告げた通り、タクシーは汐留方面へ向かっている。
会社から車で15分くらいの距離だけど、こっちの方には滅多に来ることはない。
「……キレイだね……」
近付くにつれて増えていくイルミネーションを窓から見つめて、私は思わず呟いた。
都市整備されたこの辺りは高層ビルが立ち並び、レストランやショップも数多く揃っている。
一条さんの夜ごはんを作ったあとは、いつも真っ直ぐ帰っているから
平日の夜に、どこかへ行くのは久しぶりで、ちょっとだけ心が明るくなる。
「……………」
ヒメは、タクシーの中では終始無言で、同じく窓の外を見つめていた。
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