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片想いの行方

第56章 恋する姫君



「………麗子。顔」




「………優香こそ。

弟の真剣な恋心を笑ってんじゃないわよ…………… ぶはっ!!」






腹を抱えて爆笑する2人の後ろで



盗み聞きをしていたヤスも、口元を抑えて堪えている。




俺はがっくりと肩を落とした。







……………笑えばいい。



笑って解決できるなら、俺だって笑いたい。



臆病になる程、美和を一途に想う自分のバカさ加減には





もう苛立ちを通り越して、悲しくなってきているんだ。







「恋する姫君(ヒメギミ)。

諦めちゃだめよ」




優香が笑い涙を浮かべて、俺の左手を握る。




「あなたのその10年越しの片思い。

明日彼女に聴かせてあげなさいよ。

心を込めて唄えば、きっと気持ちは伝わるわ」





「そうよ。

あんたはこの私の弟なんだから、やればできる!」




姉貴の両手が、俺の右手を乱暴に掴む。




「一世一代の愛の告白。


クリスマスの夜の奇跡を信じて。


一条の追放が序章なら


明日が決戦の日曜日よ!!」





「………………」






酔っ払いが言い放ったドン引きなセリフと、両手に伝わるウザいほどの熱。





それでも、この時の俺には





パワーを注入されたように、2人からの応援歌が心に響いていた。

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