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片想いの行方

第58章 忘れられない人

▽Side... 美和




「……悔しいけど。やられたわ」





クリスマスライブが終盤となったところで、アンナがため息をついた。




「あいつ、こんな才能まであったなんて。
やっぱり人間って不公平ね」





下のフロアを見下ろすこの位置からは、ヒメの表情はよく見えないけど。


クリスマスソングにのせて、透き通った歌声が心に響く。





「アンナ、体調大丈夫?
もう少しで終わるけど、無理そうだったら早めに家族の人に……」



「だーいじょうぶ!超元気。

私が行きたいって言ったんだし、こんな特等席用意してもらったんだから。

妊婦だからってずっと家にいたらストレスになるのよ?」





ふかふかのソファにゆったりと座り直して、アンナは二カッと笑った。




「誘ってくれてありがとうね、美和。

まぁ、ヒメとしては美和1人に来てほしかったんだろーけど♡」



「……アンナと来いよって、チケット2枚くれたから………」




アンナと同じホットティーを飲みながら


私は小さい声で答えた。








クリスマス当日。



夜の9時半。



タバコの煙が届かない、小2階のロフトスペース。




体調の良いアンナが絶対行きたい!と言ってくれたので、ヒメのジャズバーに2人で来た。



フロアは満席で、カップルが多い中でも、女性だけのグループもいくつか見られる。



みんな、ヒメの歌声に酔いしれていた。

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