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片想いの行方

第60章 裏HERO


▽Side... 美和


………………………………………………


「おはよ~美和ちゃん」




クリスマス翌日の26日。


始業開始ギリギリで席に着くと、奈々さんが顔を覗かせて、私の隣りに近付いてきた。




「ヒメくんが30分くらい前に来て預かったから、ロッカーにかけておいたよ♡」





奈々さんが指さす先に


昨日ジャズバーに忘れたコートが、ハンガーにかけてある。




「……すみません。
ありがとうございます」


「うふふ♡
昨日は楽しいクリスマスを過ごせたのね?」


「……!」




奈々さんはにんまりと笑って、声をひそめる。




「今朝ヒメくんが美和ちゃんのコートを持ってくるし~
いつも出勤の早い美和ちゃんが遅れてくるし~

ってことは……♡

ヒメくんは何も言わなかったけど、色々想像しちゃった」


「……奈々さん……」




私が困ったような顔をしたのを見て、奈々さんは笑った。




「ごめんごめん、私オバチャンみたいよね。
嬉しくて仕方ないのよ~。

社内恋愛になるし、相手はモテ男だもんねっ。

絶対内緒にするから安心して♡」




奈々さんはルンルンと鼻歌を歌いながら、ご機嫌な様子で席に戻っていく。




(……ごめんなさい……)





その後ろ姿を見つめて、心の中で呟く。




胸の奥でズキズキと鳴る痛みを抑えて、私はパソコンの電源を入れた。

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