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不器用なくちびる

第14章 背徳

そして次の土曜日。
いつものように
カフェに向かっていると…

瑞希ちゃんがお店の近くに立っていた。


「あら、栞ちゃん…偶然ね。」


にっこりと微笑む瑞希ちゃんは
今日もいつも通りかわいかったけど
なんとなく雰囲気が違う…気がした。

それに。
大きく開いたブラウスの胸もとに…
それは…キスマーク?


「彼氏のお気に入りのカフェが
すぐ近くにあるの♡
…栞ちゃんはここで何してるの?」


橘くん、あのお店は誰にも
教えてないって言ってたのに…
それにこのキスマークは…?

私が固まっていると
瑞希ちゃんは胸もとに手を当てた。


「あ、これ?恥ずかしいなぁ…
ダメって言ったのに…彼ったら…」


…やっぱり私には無理だ…
橘くんに限って、って思うけど
傷付くのが怖くて何も訊けない…
適当な言い訳をして
私はその場を後にした。

あのカフェにはもう行けない。
もともと私がいけないんだ。
もう彼は瑞希ちゃんのものだったのに…

私は、お盆に帰省出来なくなったこと、
バイトのシフトが変わって
もうカフェに行けないことを
メールして、逃げた…

そう。5年前と同じように。

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