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不器用なくちびる

第19章 【椎名 12才】

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ハァッ…ハァッ…ハァッ…


「美優…どこだ…美優…」


ここにも…ここにもいない…


どこだ…美優…


兄ちゃん!って出てきてくれよ…



ガバッ!



ハァッ…ハァッ…ハァッ…


「また…あの夢か…勘弁…してくれ…」


人形のように動かなくなった美優。
それを見たあの日以来…
俺はベッドに横になって眠っていない。


夢が…怖いんだ…


部屋を出て静かな階段を降りる。
学校なんて面倒くせ〜けど、
入学式ぐらい出ねぇとうるさいからな。
親以外の周りの大人たちが…


「美優、行ってきます。
兄ちゃん中学生になったぞ…
兄ちゃんだけ…ごめんな…」


話しかけながら触れた美優の写真は
ひんやりと冷たかった。

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