テキストサイズ

不器用なくちびる

第22章 【椎名 16才】

おやじさんとの出逢いは偶然だった。

俺が先輩らにボコボコにされて…
走って逃げて、どこかの長い階段の
途中まで辿り着いたところで
不思議な椅子を見つけたんだ。

なんで道端…ってか階段に
…椅子?

俺の服はボロボロだったし
あちこち血も出てたりして
力尽きてまぁどこへでも
寝転んでいい状態だったけど…

その椅子はなんだか知らねえけど
優しく見えて…俺は誘われるように
疲れ切った身体をその上に預けた。


「あぁ…痛ってえ…でも香山
俺やっと抜けられたんだぜ…?」


椅子に話しかける俺。
ん…?頭打ったのか…?
歯は1、2本折れてる気がするけど…
でも生きてるのは確かだ。

俺は、もう自由だ…

さぁ、これからどうするか…
抜けたのはいいけど、適当に夜を凌げる
溜まり場に行けなくなった訳だし…
だけど親の家で、
親の金で食ってくのはもう…

…俺はいつの間にか
深い眠りに落ちていた…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ