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不器用なくちびる

第22章 【椎名 16才】

……………………

梶谷椅子製作所。
それがおやじさんの会社。
俺は今、ここで住み込みで
働かせてもらっていた。

小さな会社で、本来なら
住み込みはおろか新規の社員なんて
雇う予定は無かったと思うけど…

あの日、おやじさんに拾われた俺は
椅子職人の見習いとして
生まれ変わったつもりで人生を
やり直したいと思っていた。

仕事はすげえ楽しい。
まだ下ごしらえの作業や
納品の手伝いくらいしかできないし
給料も少なかったけど
俺はやり甲斐を感じていた。

何より、就活やバイトの面接では
経歴を見ただけで何度も
落とされたんだ。
何も聞かずに、俺なんかを住み込みで
雇ってくれたおやじさんは
マジで恩人ってやつだ…
しかも、娘と2人暮らしだった家に。

それにしても…

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