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エール

第1章 リーヴル

私がそれに気付いたのは、ほんの少し前のこと。


...一週間ぐらい前と言ったところか。


ふと、あぁ好きだなぁって、感じたのが、始まりだった。


それからはだんだん彼のいいところばかりが目立つようで。


転校してきて席が隣になった私に、丁寧に学校のことを説明してくれた優しい人だったから、ずっと目で追いかけちゃってたのかもしれない。

自分にはない元気さがあったのも、惹かれた原因と言えるかもしれない。


気付いた時にはもう、手遅れなほど彼のことが好きになっていた。

彼...........................中井 和希(なかい かずき)君はすごいモテるから、私なんかの想いが叶うはずなんてないんだけど。


だって私は、いっつも本ばっかり読んでる、暗い奴だし。



容姿だってどこを取ったって、和希君に釣り合わない。


だから、告白なんてしても和希君を困らせるだけだし、見てるだけで十分だから。


この恋を宝物のように胸に大事にしまって。

私は隣の彼を本を読む合間に盗み見るぐらいで、幸せ。



彼の柔らかそうな髪、少し茶色っぽい瞳、長い睫毛。日に焼けにくいのか、いつも白い肌。ぶっきらぼうな優しさ。



気持ち悪いかもしれないけど、その全てが好きだったから、いや、大好きだったから、この「初恋」は綺麗なままで終わらせたかった。

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