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♡*:。.rena's world story.。:*♡

第5章 ♥ノックアウト



「……………っ」



留めていた涙が、ぶわっと溢れると同時に

私は飛び込むように、隼人の肩に抱きついた。




「……隼人………っ」




いつも強気な彼の口から、そんな言葉が出るとは思わなくて

私は抱きついた腕に、さらに力を込めた。




「……隼人、怒ってないの?」




隼人の肩に顔を突っ伏したまま、恐る恐る聞く。

隼人は私の体を引き寄せると、そのまま自分の膝の上に乗せて

大きな手で、優しく包んでくれた。




「なんで俺が怒るの?」

「……だって、直樹君に……」

「由宇は悪くないでしょ。
それに、俺が今まで由宇を怒ったことある?」

「……無い……」




隼人の声が穏やかで、抱きしめてくれる腕が心地よくて

さっきまで張っていた緊張の糸が、プツリと切れた。




「怒りはあのメガネに放ったから、もう消えてるよ。
今残ってるのは、由宇への詫びと不安」


「………お詫びと、不安?」




隼人とは思えない言葉が続いて

私はゆっくりと体を起こす。



……お詫びされることなんて、何一つないのに……

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