LAST SMILE
第16章 なんだよ、って。
*
病室の前に集まっているメンバー。
あたしは、
白い床をじっと睨み付けていた。
「なんで、言ってくれなかったんだよ」
武田くんがそう、静かにいった。
「酷いッスよ。2人だけが知ってて、
俺ら、何もわかんなくて」
磯部くんも、めずらしく怒っていた。
あたしと亜貴は、何も言えないまま、
ただ、その怒りと失望の声は廊下に響く。
祐兎はまだ手術中で、なかなか帰ってこない。
医者もびっくりするくらい、
発作を自分で抑えていたらしかった。
そんなになるまでライブが、
バンドが大事だったんだと打ちのめされた。
今になって、叩かれた頬が痛み出す。
「亜貴、モッチー、そんなに酷いのか?」
武田くんはため息をついて亜貴に聞いた。
亜貴は少し顔をあげて武田くんを見たあと、
すぐに視線を逸らして口を開いた。
「もう・・・かなり無理をしてるんだ」
あたしはそう、
静かに話し出した亜貴を見つめた。
「俺だけが知ってた。麗華の前で発作が起きて、
麗華は知らなかったのに
“知ってしまった”だけなんだ。
黙ってくれって頼んだから黙ってただけ。
麗華は何も悪くない。悪いのは俺だよ」
「亜貴・・・」
亜貴は、きっと一番
ショックを受けてるはずなのに、
あたしを庇ってくれた。
あたしは亜貴をじっと見つめる。
亜貴は苦しそうな顔をして床を見つめていた。
こんな亜貴、初めて見たよ。
どうして?
何してるの?祐兎。
早く、早く顔を出して。
-あれ?お前らなにやってんだよ?-
くらい言って、みんなを明るくして。
ライブ前みたいに、ふっと、突然現れてよ。
そうしたら、あたしが怒ってあげるから。
遅いよって、怒鳴ってあげるから。
だから・・・。
「祐兎・・・・」
あたしはポツリと呟いていた。
そんな時だった。