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LAST SMILE

第17章 最初の歌








どれだけそうしていたんだろう。


祐兎の苦しそうな息遣いだけが響いていて、
あたしはじっと、祐兎の腕の中にいた。


あたしがすっぽりと入ってしまうように、
祐兎の体は大きくて、

あたたかく包み込んでくれた。



「ねぇ、祐兎」


「・・・ん?」


「あったかい・・・」


「・・・俺も」



祐兎の声が聞こえる。


低くて、心地いい、綺麗な声。


祐兎の胸に顔を埋めると、
心臓の音がよく聞こえた。



その規則的な鼓動に安心して、
あたしは目を閉じた。



「あのさ、あのライブの・・・
 アンコールの曲・・・歌詞かえたろ?」



祐兎が、しんどそうに言った。


少し、咳をしてる・・・。


咳き込むたびにあたしの体は反応して、固まる。


そのたびに祐兎は、強く、優しく
抱きしめてくれて安心させてくれた。




「あれ・・・すっげぇ良かった」



「ほんと?あれは―」




あの曲は、
 あの歌詞は・・・。


あたしの祐兎への―





「なぁ、あれ、今歌ってよ」


「今?」


「ああ。いいじゃん俺、誕生日だし」





ははっと小さく笑う祐兎。



あたしがびっくりして顔をあげると、
祐兎は白い息を吐いた。




「笑わない?」


「ああ」


「絶対?」


「ああ」


「あたし、下手くそだよ?
 音がないと歌えないよ?」


「知ってる」


「祐兎!」


「はは」






ああ。
いつものやりとりだ。



決してロマンチックじゃないけど。



映画やドラマのようにはいかないけれど、



あたしにとってその何気ないやり取りは
すごく大切なものだった。



ゆっくりと息を吸って、目を閉じた。




そして―








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