LAST SMILE
第4章 ふさわしいあたし
*
それからあたしは1週間、
毎日のように亜貴と一緒に歌った。
亜貴には、歌えたからもういいんじゃないかって
初日の時に言われたけど、
あたしはまだ慣れないからっていうことでお願いした。
何でか分らないけど亜貴とは話しやすくて、
もう少し一緒にいたいと思ったから。
亜貴は嫌がらずに付き合ってくれた。
あたしがどんなに早く行こうとしても、
必ず亜貴はあたしよりも先に屋上にいてくれて、
なんだか敵わないなぁって思えた。
他のメンバーとは今日の初合わせで会うことになってるけど、
亜貴とは毎日いたから、なんだか亜貴のことがよくわかってきた。
まず、亜貴はまともな人だ。
他のメンバーはちょっとどこか抜けてるところがある。
みんないいところが沢山あるのに、
最悪の欠点がそれぞれにある。
とくに祐兎なんかは特別嫌なやつ!!
メールをよこしてきたかと思えば、
からかいのものだったり、馬鹿とかアホとか、
そんなんしか言わない。
だけど、亜貴は頭が良くて、ベースも上手い。
そんでもって、
他のメンバーのダメなところも全部カバーしてあげられる。
そんな上では非がないまともな人だった。
そして亜貴はあのぶっきらぼうな、
面倒くさそうな顔が通常運転だ。
怒っているわけでもないし、
面倒くさがってるわけでもない。
本人に思い切って聞いてみたら、
“これが俺なんだ”って苦笑してた。
そして最後に、
亜貴はよく苦笑する。
喉の奥でくっと笑って、顔をゆがめる。
そんな亜貴は苦笑した顔が良く似合う。
亜貴って、お兄ちゃんみたいだ。
あたしの、お兄ちゃんにそっくりだった。
だから、話しやすいって思ったのかも・・・。
お兄ちゃんだと思ったから・・・。