LAST SMILE
第7章 お兄ちゃん
*
あたしたちは使ってない部屋に入った。
お客さんが来ちゃうんじゃないかと不安だったけど、
ここのカラオケボックスは、
亜貴の親戚が経営しているお店らしい。
この部屋を自由に使っていいと、
つまり、亜貴の隠れ家みたいなものなんだって。
部屋に入って、ソファーに並んで座る。
外の騒がしさが小さく聞こえた。
「で、話って?」
亜貴はその部屋にあったベースを
ケースから出してチューニングを始めた。
最近、いじってないから
調子狂いやすいんだよなーって、亜貴は言う。
でも、黙って聞かれるよりは、
そっちのほうが良かったから、
あたしは構わずに口を開いた。
「あのね、亜貴には、話しておこうと思って」
「ん?何を?」
「あたしが、なんでバンドを始めたのか・・・」
あたしの、
本当の理由・・・。
亜貴はあたしのその言葉を聞くと、
ベースをいじっていた手をとめた。