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恋してキスして抱きしめて

第19章 本当の、サヨナラ

「……私を楽しませる為に、半分は演技してくれてるのよ。
本当は、寡黙な人なの」

「そうか~?
俺、あの人が頭にハチマキ巻いて、麺を湯切りする姿まで想像しちまったよ」

「……えぇ? なにそれ」

「下町繁盛店の、ラーメン屋店主」

「………ぷっ///」



白い毛布の中から細い手を出して、朱莉は口元を押さえた。


足首まで包帯を巻かれた両足が、痛々しいけど


ツボに入ったのか、目を細める朱莉を見て


一気に肩の力が抜ける。




「………明日の予定は、キャンセルだとさ」


「………!」


「新幹線と、施設と、ご両親と

色んな所に電話してるから時間かかるだろうけど、終わったら戻ってくるよ」




俺が静かにそう言うと、朱莉はゆっくりと手を下げる。


再び揺れる瞳を見つめて、俺は小さく笑った。

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