恋してキスして抱きしめて
第19章 本当の、サヨナラ
「………千夏!!」
「…………っ」
正面玄関の自動ドアを抜けて
病院のロータリーの手前で、やっとその小さな右手を掴んだ。
まだ3時だというのに、空には真っ黒な雲が覆っていて
スコールかと思われた雨が、今でも激しく降り続けている。
ギリギリ屋根のある所で、俺と千夏は止まった。
「……はぁ……っ」
肩で大きく息をした千夏の左手に、折り畳みの傘が握られていたけど
横殴りの雨によって、その髪も、服も濡れてしまっている。
「……ちーちゃん、足速すぎ……」
触れた指先は震えていて、俺の方に振り返らないので
俺は紙袋を持ち直して、千夏の正面に回った。
「どうして逃げるんだよ」
「…………」
千夏は俯いたまま、俺を見ようとしない。
全力で走った為に、ドクドクと鳴り続ける心臓
別の意味で、さらに鼓動が激しくなってくる。