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ずっと君を愛してる

第9章 幸せな時間

ニューヨークは近年稀に見る大寒波に襲われた。それでもぼくらは歩いて色んなところに行った。カメラを持って。
静流がよく来る公園で寒い寒いと言いながら写真を撮り、ベンチに座ってポットのコーヒーを飲み、作ってきたサンドイッチを食べた。何かの動物の足跡を追いかけたり、子どもみたいに雪玉を投げあったり。そして日が落ちると部屋に帰って二人で食事を作り、食べた。静流の料理は世界中で覚えた味があちこちに散りばめられて、すごく不思議で、それでいておいしいかった。
その後は写真をみたり、現像したり、抱き合ったりした。もうずっと前からこうしているような。お互いの体を知り尽くしているような。こうすることが当たり前みたいに。
どんどん表情が変わっていく。このときだけは別の静流を見ているようだった。

「静流は・・・その、初めて、だった?」
「そうだよ。」

静流はきっぱりと言った。
ぼくだってそんなに経験豊富ってわけじゃなかったけど、静流が初めてだと聞いてなんとなくほっとしている自分がいた。

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