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アクマにアソコを貸しました

第5章 近づいてるんじゃないですか

貴重な時間が資料の再編にとられたおかげで他の仕事が押してしまった。

こりゃ残業だな、というわけでちょっと休憩。

達成感と疲労感に包まれてトイレから出たところでヒョイと抱き上げられた。
ぐぎゃあぁ!変態ーーー!
ところが叫んだつもりのなのに、声も出ない。


「俺の呼び出しを無視したあげく叫び声をあげようなど、いい度胸だな?」


ひいぃぃぃ!瞳の紫がいつもより鮮やかだ、多分だけど怒ってるぅーー!


ケィシは長い脚でスタスタと真っ直ぐに廊下を進み、突き当たりの壁にぶつかるというのに歩調を緩めない。ぶつかるっ!!ギュッ目を閉じた。

覚悟した衝撃はなく、モヤッとした感覚と一瞬の耳鳴り。壁をすり抜けていた。

ストンと会議用のデスクに下ろされる。ケィシは軽く屈んで射抜くように目を合わせてきた。

「梓穏、昼に呼んだはずだが?俺を無視してイチャイチャしていたとはイケナイ子だな」

「イチャイチャしてないし!仕事だもんっ」

「仕事だよな、わかってるよ。でもな――


凄く不愉快なんだよ」

無人の小会議室。斜めに射し込む夕陽を背に笑う美しき悪魔。

下っ腹の奥がズキンズキンと疼いた。

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