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優しいキスをして

第3章 3度目のキス……美優の闇

それから二人で無言でファイルを整理し、閉店作業が終了するとちょうど8時を過ぎた頃だった。
「じゃ、帰りましょ」
「うん」
あたしが促すと北澤さんもすぐに帰る仕度をした。裏口を北澤さんが閉めて、後ろにあたしが続いて歩く。
体がだるい。……重い。
あたしは裏手を歩くのも辛くて傍らのフェンスに掴まっていた。
まだ時間あるし、少し車で休んでから行こう。
今日は慶ちゃんと約束していた。慶ちゃんと会うときはいつも泊まりと決まっている。明日は休みだし、ゆっくりしよう。
……っぁ。……な……に?
いきなり、今までとは比べ物にならない強いめまいのような、急激な眠気のようなものが襲ってきた。
……これっ。ヤバっ。…………。
あたしは倒れそうになりながらもどうにかフェンスを掴み、フェンスを背にしてぶつかりながらもその場に座りこんだ。
…………っ。ってぇ……っ。
なんなの、これ…………。
「どうしたの?具合悪い?」
さっきのフェンスにぶつかった音で気づいたらしく、北澤さんの声がすぐ近くで聞こえる。
「…………あっ、大丈夫、だから。ちょっとめまいがしただけ。……あたし、少し休んでから帰るから、北澤さん、先帰っていいよ…………」
「おい、大丈夫かよ?こんなとこで座りこんでると危ないよ?」
心配しているような声。
もう、あたしのことなんて、気にしなくて、いいから。
あたしは上手く笑えてるかわからないけど、笑ってみた。
「大丈夫。……ちょっと休むだけだから」
「…………そう?気を付けてね?」
少しのあと、北澤さんがゆっくり離れていく気配がした。
ああ、……。早く行かないと。
でも、めまいがおさまらない。はやく……っ、終わって……。




しばらくすると、さっきの激しいめまいはだいぶおさまった。
糖分不足か何かかな。
最近ご飯食べてないからなぁ。
あたしは食欲がわかず、特に最近は食事らしい食事を取っていなかった。2日に1食食べればマシな方だった。
食欲がなくてもたまには食べなくちゃな…………。
「……大丈夫?」

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