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人型ナビ

第4章 ドライブ②

香枝も着替え終わって俺は顔を洗って歯を磨いた。

全部用意が終わって車に二人で乗り込む。

「さ、香枝。案内をしてね」
「はい。」

香枝は、昨日検索した道で行くことを俺に告げると、案内を開始しだした。

「10メートル先、を右、です」
「はいよー」

アパートの駐車場から出て行くと、すぐ目の前には道路がある。

「香枝、どっち方向?」
「右、です」
「ああ、右か。」

右折してみると、香枝はまたしゃべりだす。

「信号、を、左、です。青信号、に、なるまで、止まって、いて、くだ、さい」

こんなこともちゃんと言ってくれる。
普通のナビでは言いそうもないことまで、しっかりと言ってくれるのだ。

「そうだね、赤で止まらなかったら危ないもんね」
「はい。」

こんな当たり前のことを言われても、香枝に言われるならかなり楽しく感じる。

「ねぇ、香枝」
「なん、ですか?」

香枝が首だけこちらに向けてくる。

「あのさ、香枝。おなか、すかない?」
「香枝、はすいてない、ですが、いつき、は何も食べて、ないからおなか、すいたよね?」

こんな気遣いまでできる。
「古い香枝」だったらできそうもないことだ。
俺がおなかがすかないかと言うより早く、「おなかがすいた」「なんか食べたい。」「ジャンク系じゃなきゃ嫌だ」・・などなど、うるさかったものだ。

「そうだね。俺はおなかがすいたよ。」

香枝はどれだけ人に近いといっても、ナビなのでおなかがすいたりはしない。
食事の変わりに充電ができる。
ソーラーで充電したり、家の中のコンセントで充電できたり、車内用のコンセントで充電できたりする。
なので、香枝がおなかがすいた、といえば充電の合図なのだ。

「それ、じゃあ、何が、食べたい?」
「そうだなぁ、軽く食べられるものがいいかな。パンとか、おにぎりとか。」
「片手運転、は、ダメだよ?」
「んー、じゃあコンビニ。止まって何か食べるよ」
「近くのコンビニ、を検索、しています。・・検索、完了しました。1キロメートル先、右側にコンビニ、が、あります」
「ありがとう」

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