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最後の恋は甘めの味で

第8章 イライラ

何を問われるかはわかっていた為、先に口を開く。


「なんにもないわよ。別に。上條くんとはなんにも」


その言葉は自分にも言い聞かせるように。


「........きっと上條くんもおんなじこと言うんでしょうね」


ぽつりと呟かれた佳世の言葉に聞き返そうとするも、佳世は既に帰る準備をし始めていた。


「昼飯は?」

「私、夕方までに仕上げなきゃいけないものがあるから。作業している間にでも買ってきたパン食べるわ」


じゃあ、と言って手を挙げた、佳世に手を振る。


すると屋上の扉を開けようとした佳世の手が止まった。

「?」

「暁.....」

「ん?」

「.......私が言うことじゃないかもしれないけど......もう、いいんじゃない?暁はよく頑張ったし......」


それ以上は言葉にならず佳世は黙ってしまった。


でも、言わんとしていることは分かっている。


分かっているけどどうにもならないことなのだ。


「......ありがとう。佳世。でも、私大丈夫よ。このままでも十分人生謳歌してるわ」

「.......うん。そうよね。暁は暁の生き方があると思うし。急がなくてもね。さ!切り替え切り替え。じゃ、本当に戻るわ」

「うん。頑張って」


バタンと音がし、戸が閉まった。


あの時と同じように一人になる私。


佳世は折角来た恋のチャンスを掴めばいいと思っているんだと思う。


上條くんはいい男だと思う。


何箇所か除けば。


でも、だめなのだ.......








この、乾いた心はちょっとやそっとの水じゃ潤せない。








そして、この前来たあの人からの留守電を聞いて確信した。








私はまだ..........あの人に縛られているということを。

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