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秘密の時間は私のもの

第30章 借し

確かに、泣かせた数幾度。


鳴かせた数も幾度だ。


その現場をしっかりじっくり見たこいつ。


何を言っても反論にならないだろう。


まさか、颯太に嫌われるためにシた行為が、こんなところで裏目に出るとは。



「.....だけど、それはそれ。これはこ」

「そもそも、今回も泣かせてるのはお前だしな」



俺の言葉を遮り、少し強めに吐かれた上野の言葉。


はぁ?といった顔を浮かべる俺に、上野は溜息1つ、吐いたかと思えば


自らのポッケをまさぐり始めた。


そして、出てきたのは細長い紙で。


上野はそれを、俺の胸に押し付けた。



「....んだよ」

「良いから受け取れよ」



再度、強く押し付ける上野から渋りながらも受け取り


見れば、それは遊園地のチケットのようで。



.....え、なに。これ...

一緒に行こう、とかじゃねぇよな...



そうだとしたら破り捨てようと考えた時、上野が言葉を放つ。






「“そこに颯太と行ってくる”
これで、借しはチャラにしてやるよ」







ほう....?

つまり、颯太とデ...


.....


.......!?



「はぁ?!おい!!」



言葉の意味を理解し、混乱する俺を置いて


上野は、幸運を祈ると言わんばかりのグッドポーズを置いて


その場から消えていったのだった。

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