
Calling Fall
第2章 儚く散るように
桜は散らない
空気が冷える
あのとき
彼女に手を伸ばした校舎の裏庭で
ぼくの手は空をきる
ため息さえも
白く
まるで灰のよう
空気に溶け込み消える
近くのベンチに座る
ここを卒業して
それでもまだ連絡をとっていて
それがいつだか無くなって
会いに行っても姿も君の痕跡も無く
君は
消えた
なんで未だに君のことを思い出すんだ
本当に好きだったかもわからない
あんな……
「はあ」
手ばかり見つめ
もう眠ってしまいそう
学校の
砂混じりの土を踏む音がする
顔をあげた
大人の君は
あの頃と違って
笑わずぼくをみていた
「あ……」
言葉が出なかった
生徒のいない冬休みに
校舎に忍び込み
昼間から何をやっているんだろうと
そんなときに
なんで君が
「なんで、どうしているんだ」
ぼくが気づくと
その場で立ち止まったままの彼女は
笑わないまま口を開いた
「あなたこそ」
何も言えない
