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特別刑務所(仮)

第21章 佐野。

「さて、もう二度と会うことはないだろう。悪さなんか二度とするなよ。じゃあな。」


木下は外へ続くそのドアを開ける。
嫌だ嫌だと駄々をこねる佐野の背を押す。

「嫌だ!章!だって、ずっと一緒だって!好きだって・・・」
「何いってるの練?君の得意な嘘で騙されてただけだよ?俺とずっと一緒なんて無理に決まってるでしょ?練は犯罪者。俺は刑務官だよ?」


その言葉を聞いた瞬間佐野の力が抜けていくように地面に座り込む。
あまりにもひどいその言葉に俺は佐野のそばに駆け寄ろうとしたが九条に止められる。


「さ、もういきなさい。」

抱き抱えるように扉の外側へ佐野を運び、完全に佐野を通路側へ下ろすと重いその扉を閉じた。
木下がこちらに振り替えると同時くらいに佐野が向こう側からドアを叩き始めた。

「嫌だ!嫌だ!開けてよ!章!嘘だって、嘘だってわかるよ!何年いたと思って・・・
どれだけ、好きだと・・・章尭・・・あけてよ・・・」


叫び声とドアを叩く音、それに混じる微かな泣き声。
それでもその扉が開かれることも、木下が振り返り声をかけることもなかった。

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