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闇夜に輝く

第7章 営業前の一幕

今は木曜日の夕方。俺は店内でも一番広い客席に座り、牛丼を片手にキャストの給与システムの資料を読んでいる。
隣りでは増田店長が新聞を読み、坂東さんがキャストの出勤予定表を見ながら唸っている。どうやら、思うようにキャストの出勤が整わないようだ。

「あれ?めずらしいねぇ。お勉強?」

逆隣りに座っていた西野さんから海斗に声がかかった。
この人はノリだけで生きているような男。あまり深く考えずにしゃべるため空気が読めない発言が多い。
そのために、客やキャストを怒らせることもあるがあまり自覚していない。
どちらかというと自信過剰で、仕事ができると思いこんでいる。
キャリアはそこそこあるため、ホール業務、キッチン業務、開店準備、閉店作業は誰よりも素早いが、一つ一つの作業が雑な為に海斗がフォローに回る事も多い。
視野が狭く、付け回し中は落ち着きがなく常にテンパっている。
さらに、客に説明したり応対するのが苦手でクレームも多い。
そのせいで役職の昇格と降格を繰り返し、3年目なのにホール長と平社員をいまだに行ったり来たりしている。
背が低くキャストからはサル扱いされている場面もよく見かける。
海斗自身、苦手意識があるがシカトする訳にもいかず答える。

「今日、咲さんが初出勤なんですよ。色々聞かれても答えられるようにと思いまして……」

「へぇ〜、真面目だねぇ。そんなもん適当でいいんだよ。咲さんだっけ?どうせ未経験の子なんでしょ?」

「まぁ、何か聞かれたらコレを見せればいいんでしょうけど、俺も知っておきたかったので」

「ふ〜ん、まぁ頑張って。ところで出確はしたの?」

「しゅっかく?ですか??」

「出勤確認だよ。したの?」

「いえ、してないですけど」

「しないとダメじゃん。勝手に休まれると大変だよ。知らないよ~。てゆーかそんな基本的な事もわからないの?」

「はぁ、すいませ…」



ドカン!!!!


その時、新聞を読んでいた店長が思いっきり机を蹴り上げた。

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