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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第8章 もっと、君を知りたくて。



「…すいません。」


千「わざとじゃないんならいいんだけど…」



俺から奪い返したマスコットをお手玉のようにぽんぽんと投げ上げてはキャッチして、を繰り返す。



千「あんまり好きじゃなくて…自分の名前。」


「男の人でもざらにいると思うけど?」


千「でも、そんないい名前でもないでしょ?『ちはる』って?」


「いや…よく分かんないけど…」


千「でも、誰に呼ばれるか、ってのもあるかなぁ…」



彼が何気無く呟いた一言に、



少しひねくれた俺が顔を覗かせる。



「伯父さん…とか?」



彼の動きが止まる。



千「どうして…そう、思うの?」



常に支えが必要なんじゃないか、ってぐらい頼りなげな背中。



「だって、好きなんですよね?」



でも、体の中に太い針金が通ってるかのように凛と立ち尽くす背中。



千「……うん。」





かもしれない、って言わないんだ。





千「好きだった…。」





顔をあげ、きっぱり言うあなた。





その目線の先にあるのは在りし日の眼鏡をかけた優しい笑顔。





千「でももう……昔のことだから。」





一体どんな顔をして言ってるんだろう?



見たかったけど、叱られそうだからやめた。



だから、小さく震えだしたその背中を静かに抱きしめる。



そして、聞こえてないかも知れないけど、



啜り泣く耳元で言った。







俺は、そんなあなたが好きなんです、と。


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