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真夜中のひだまり

第1章 30歳のフリーター

「次の更新はなしということで…」
…今なんて?
その後の話は何も耳に入ってこなかった。

ついに我が身にも起きた派遣切り。
派遣社員とはいえ、6年間一生懸命働いてきた。
なんともあっけない。

このご時勢、特に資格もないアラサー女子には就活は厳しい。
収入がなくなっても、毎月の支払いがなくなるわけじゃなし、落ち込んでる暇もない。

「はぁー。」
心の底からのため息。

なんでだろう、こんな時でも泣けない。



駅前のカフェで求人誌を見ながら、いよいよ自分の置かれている立場に絶望する。
こんなはずじゃなかったのに…
消しても消しても、頭の中に浮かんでくるセリフ。

「この世の終わりみたいな顔してるよ。」
顔を上げると、心配そうな顔をしたマキが立っていた。

「もう終わってほしい。生きてけない。」
そう嘆くと、マキは困った顔をして前に座る。

「あんまり落ち込まないで。チカラになるし、大丈夫だよ。」
大学時代から友達のマキはしっかりしてる。
キレイで優しくて、素敵な彼もいて、仕事もバリバリしてる。
どこから私達、違ってきちゃったんだろうね。

「彼の知り合いがね、小さいご飯屋さんやってるんだけど、バイトの子が辞めちゃったんだって。里衣さえよかったら、次の仕事決まるまでバイトしない?」
テーブルに倒れこんだ身体を起こして、マキに向かい合う。
「もう30だよ。」
ふてくされている私に、マキは優しく笑って、
「1人でも何とかなるくらいの小さなお店なんだって。だから就活優先できるように配慮してくれるって。」
考え込む私に、
「とりあえず家に閉じこもってても何にもならないでしょ」
マキの言ってることは正しい。
感謝しなきゃ。
「ありがとう。お願いします。」


6年間お世話になった会社を去り、30歳にしてフリーター。
どうなることやら。
バイトの初日までは1週間あるから、とりあえずのんびりしよう。
まだ次の仕事見つけるだけの力が湧いてこないや。

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