
齧りかけの林檎
第1章 ● 真っ赤な君 ♀side
「しょ、少年・・・?大丈夫?おーい」
先程差し出した手を、男の子の顔の前で左右に振ってみた。
恥ずかしさの余り、固まってしまったのだろうか。
そりゃそうだよね。
人前であんなに派手にコケたら
そんな顔になってしまうよ・・・。
それもわたしに爆笑されたわけだし。
雨が降っていることを思い出し、
男の子も一緒に傘の中に入るようにしてあげる。
すると、少しだけ暗くなった傘の中で、
固まったままだった男の子に
顔の前に出したほうの手をガッ、と掴まれた。
