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言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声

敦史目線


ある日千秋がこんな事を言い出した(正確には書いたんだが)


『僕、病院に行こうと思うんです』
「病院、ですか?」


悠史が反芻した問いに決意に満ちた目で頷いた千秋はどう見ても何か病気を抱えているとは思えない

しかし悠史は


「千秋さんがその気になったのでしたら止めませんよ」


と言う


「おい。なんでだよ。千秋は別に病気でもなんでもねぇだろうが」


俺の言葉に悠史は驚いた顔でこっちを見た


「何を言ってるんですか悠史。千秋さんは病人ですよ」
「あ?どんな?」
「どんなってそれはーー」


悠史が続ける前に千秋がこちらに紙を見せる


『ストレス性失声症です』


ストレス性失声症……
字的に、ストレスで声を失う?

あ……


俺の顔を見て悠史はため息


「わかりましたか?」
「……あぁ」


病院ね
確かに、行く気になったのなら行ったほうがいい

脳にも身体にも障害があるわけじゃねぇのに話せないってのは確かに異常だ

それに


俺も千秋の声を聞いてみたい


「俺も悠史に賛成だぜ?千秋。病院行ってきな」
「!」


俺達から許しが出ると思っていなかったのか千秋は顔を明るくした

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